我が家のメイン・マシンのグラフィックス・カードの冷却ファンが、しばらく前から異音を発するようになった。ファンの軸内に物理的な抵抗があるようで、回転中の軸のアタマをポンと叩くと一瞬静かになるものの、すぐに復活してしまう。普段は 「ビィ~~~」 と言った音が断続的に鳴り、これでも十分集中の妨げになるが、最高に盛り上がって来ると振動がケースに共鳴してけたたましい音を鳴り響かせ、健全な精神状態の維持に支障が出る。かすかな期待をこめてグラフィックス・カードを外し、ファン周りの埃を入念に除去したが、効果はなかった。

1年以上前に発生したファイル・サーバーの CPU ファンの異音事件では、素直にファンを交換して、正攻法で解決した。しかし今回はグラフィックス・カードなので、交換して使える汎用的なファンを見つけるのが難しい。ファンのためだけに同じグラフィックス・カードを中古で探すのもバカらしいし、ズバリの製品が見つかってもファンがどの程度持つかはわからず、確実性に欠ける。

ただでさえ忙しい現在、耐え難い騒音で錯乱して、本番サーバー上の root で rm -rf / とか、妻の Firefox のブックマークを削除する等のマズい操作をやってしまっては、目も当てられない。事故が起こる前に、応急処置を施すことにした。

ファンを分解してグリスを塗るようにじっくり丁寧な作業をしている余裕は、今は時間的にも心理的にもない (分解したファンを元に戻すのも大変そうだし)。そこで今回荒療治に採用したのは、工具箱の中に埋もれていた自転車用オイル。言うまでもなく想定される適用対象は自転車のギアやチェーンで、容器の注意書きに 「PC パーツに使用しないでください」 とは書いてないが、電気が流れる基盤上の扇風機に垂らすことは、恐らく推奨されていない。ここで唐突に学生時代、コンクリート等の流動性を表す "workability" を 「ワーカビリチー」 と発音する材料工学の教授を真似て、食堂のソースや某ファスト・フードの商品等、身の回りで粘性の高い液体を目にする度にこの言葉を使って面白がっていたことを思い出した。自転車用オイルはグリスに比べ、ワーカビリチーが良すぎると言うわけだ。

さて問題のオイルは、必要最低限の液量をピンポイントでファンの軸付近に落とし、基盤に垂らさないよう注意しながらカードの向きをあちこち変えて軸周辺に浸透させた後、爪楊枝に巻いたティッシュペーパーで周囲を拭いた。グラフィックス・カードはケース内でファンを下向きにして挿さっているため、万が一オイルが垂れたとしても自身の基盤が濡れることはないし、下に PCI カード等もないので、他に被害は及ばないはずだ。

「上手く行ってくれよ」 と祈りながらケース内に戻し、PC の電源を入れてみると、結果は見事に成功。オイルが馴染むまでの時間差か、ファンが回り出しても数秒間は異音が鳴っていたが、ある瞬間を境にピタッと騒音が止み、まるで購入直後 (何年前だっけ?) のような静音性が蘇った。素晴らしい。

応急処置から数日が経過した現時点でも静かな状態が保たれていることから、守備は上々だったと言えそうだ。まァ所詮対処療法に過ぎないので、オイルが乾燥すればまた異音が復活する可能性が高いが、とりあえずは問題を先送りできてよかったね、と言うことで。

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