先日 Advanced/W-ZERO3 [es] をフォーマット~環境再構築した際に初めて存在を知った WMWifiRouter を、試してみた。最初は €19.99 を払って Ad[es] を無線 LAN ルーター化したところで、結局出口がボトルネックになって通信速度はこの方法と変わらず 204Kbps のままで何のメリットがあるのかと疑問に思ったが、すぐに決定的な違いに気が付いた。Eee PC 900HA 等の Windows マシンが Ad[es] や W-SIM を差し替えた W-SIM ジャケットをモデムとしてダイヤルアップするのではなく、あくまでも Ad[es] 自身が WILLCOM 回線経由で通信するため、¥5.25/分、最大 ¥1,575/月 の PRIN 接続料がかからないのだ。

ローカル環境で開発中の Web サイト/サービスに外部ネットワークからテストする必要がある際にも使っていた、Ad[es] の W-SIM を USB-WSIM に挿し替えて WILLCOM 回線経由でアクセスする方法では、当然プロバイダーの接続料が発生する。この接続料が毎月の通信コストを押し上げる要因になっていたので、これを低減できるならありがたい。WILLCOM 的にはありがたくないだろうが・・・。

以後は Ad[es] の場合の説明だが、他の Windows Mobile 搭載で無線 LAN 機能を持ったスマートフォンでも、後述の ICS の部分に注意すれば、多分使えると思う。


ただし最初に書いておくと、当初 W-SIM を W-SIM ジャケットに挿し替えて使う方法を採用したのは、出先で Ad[es] のバッテリー消費を抑えるため。WMWifiRouter で Ad[es] を無線 LAN ルーター化すると、Ad[es] はダイヤルアップしつつ無線 LAN を使い、ルーティングやら NAT やらの仕事をし続けるので、バッテリーは激しく消耗することになる。利用の際は AC アダプターや PC からの USB 給電等、外部電源を使える状態の方がいい。僕が使っているのは以前に購入したミヤビックス リストラクタブルケーブル・デュアルだが、USB 給電目的ならこっちでも良さそうだ。僕は Ad[es] ~ PC 間のファイルのやり取りは普通にファイルサーバー (Samba) 経由で ActiveSync は全く使わないので、USB ミニ B コネクターを使う機会はほとんどない。

WMWifiRouter をインストールするには、ここから 21日間有効な Trial 版を入手すればいいが、Ad[es] の Windows Mobile 6 Classic にはインターネット接続共有機能がないため、先に ICS (Internet Connection Sharing) をインストールしておく必要がある。インストーラー "ICSInstall.CAB" のダウンロードは、ユーザー登録後に可能になる。この作業は Ad[es] 以外の Windows Mobile 搭載スマートフォンでは不要な可能性があるので、要注意。

ICS のインストール後、WMWifiRouter をインストールする (現時点の最新版は 1.52)。インストールが無事に終了したら、あらかじめ Ad[es] の無線 LAN を有効にした状態でWMWifiRouter を起動する。主な画面のスナップショットは以下の通りで、言語は敢えて英語のままにしてあるが、日本語にも対応している。

(fig.1) はメイン画面の様子。標準状態の Ad[es] では使えない "Cellular to Bluetooth" が無効になっている。3つある USB を使用する接続方法は ActiveSync を必要とするので、ActiveSync をインストールすらしていない (かつて一度インストールしたものの速攻でアンインストールした) 僕が実質的に使えるのは、左上の "Cellular to Wi-Fi" のみだ (右下は終了ボタン)。

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fig.1: メイン画面

接続方法を設定 (fig.2)。"Options" → "Configuration" → "Cellular connection" で、"CLUB AIR-EDGE" が選択されていることを確認。

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fig.2: 接続方法

Wi-Fi ネットワークの管理方法 (fig.3)。"Stored (Faster)" は一度 Windows Mobile 上で自動作成されたネットワーク設定が以後も残るので合理的な気がするが、僕の環境では後述の問題があったため、ネットワーク設定の作成/削除を毎回行う "Dynamic (Safer)" を選択する。

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fig.3: Wi-Fi ネットワークの管理方法

接続モードは "Ad-hoc (advised)" を選択 (fig.4)。そう言えばアドホック通信を実際に利用するのは、これが初めてだ。

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fig.4: 接続モード

SSID を入力 (fig.5)。デフォルト設定は "WMWifiRouter" だが、ただでさえセキュリティ上不安の多い WEP を使用せざるを得ない上に、WMWifiRouter を知る悪意ある者に余計な情報を与えることにもなりかねないので、任意の文字列に変更した方がいい。

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fig.5: SSID

暗号化/認証方法を選択する (fig.6)。残念ながら、アドホック通信では脆弱な "WEP/Open" しか使えない。

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fig.6: 暗号化タイプ

13文字の WEP キーを入力 (fig.7)。クラックされないことを祈ろう。

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fig.7: WEP キー

暗号化キーインデックスを選択 (fig.8)。デフォルトは "1"。

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fig.8: 暗号化キーインデックス

以上で "Wi-Fi Network" の設定は終了。次は "Options" → "Configuration" → "IP range" で、MWifiRouter の内側インターフェイスで使用する IP アドレスの範囲を設定する (fig.9)。"Options" → "Configuration" → "Advanced" で任意の範囲を設定できるが、ひとまずプリセット値から、既存ネットワークと重複しない範囲を選択する。

前述のように、WMWifiRouter は起動前に無線 LAN を有効にしておく必要がある。このため IP アドレスの範囲を既存の無線 LAN と同じにした場合は、その既存の無線 LAN アクセスポイントが利用可能な場所では Ad[es] 上の異なるネットワーク・インターフェイスに同じサブネットの (場合によっては全く同じ) IP アドレスが割り当てられて通信障害を引き起こす原因になり、具合が悪い。デフォルトは "192.168.0.x" とありがちな設定なので、要注意。

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fig.9: IP アドレス範囲

(fig.10) はメイン画面から "Cellular to Wi-Fi" を起動し、PC からの接続を待つ状態。"Network" に自身で設定した SSID が表示されていれば正常だが、WMWifiRouter 起動前に Ad[es] の無線 LAN を有効にしていなかったり、設定が不十分だと、"Idle" や「準備中」等のままで SSID が表示されない。

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fig.10: Cellular to Wi-Fi 起動後

(fig.11) は PC から無線 LAN 接続して、大き目のデータをダウンロード中の WAN 側の通信状態。(fig.10) の棒グラフのアイコンをクリックして▲▼でページを切り替えると、この画面になる。この瞬間の下り速度は 23.7KB/s、と言うことは約 189.6Kbps なので、最大 204Kbps の Ad[es] としては頑張っている方か。遅いけど。

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fig.11: WAN 側通信状態。ダウンロード中

(fig.12) の "Wi-Fi" は、ルーターの LAN 側インターフェイスの状態。この瞬間は 24KB/s (約 192Kbps) だった。"Address" を見ると、IP アドレスが先に設定した範囲で自動的に割り当てられているのが確認できる。

このときダウンロードに使ったのが、某 Linux ディストリビューションの ISO ファイル (約 700MB)。ブラウザーのダウンロード・ウィンドウ上では、終了まで 9時間 30分くらいと表示されていた (当然中止)。

ちなみに "Wi-Fi" 表示の下におかしな表示があるが、なぜか画面を横向きにするとこれが出て来る。レタッチミスではないので、悪しからず。

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fig.12: LAN 側通信状態

(fig.13) はWindows XP での無線ネットワークの状態。上が普段利用する自宅の無線 LAN で、下が WMWifiRouter によるアドホック接続。中段の 2つは、恐らく近所のお宅のアクセスポイント。1つは錠のアイコンがない "Unsecured wireless network" と言うことだが、勝手に接続してはいけない。

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fig.13: 利用可能な無線 LAN アクセスポイント一覧

WMWifiRouter が提供する無線 LAN に接続した状態 (fig.14)。"11.0Mbps" と表示されているが、外部との通信時は出口がボトルネックになり、前述のような速度しか出ない。

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fig.14: 無線 LAN の状態

(fig.15) はその詳細情報。IP アドレスをはじめ、WMWifiRouter の DHCP サーバーから通知されたネットワーク情報が確認できる。

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fig.15: 無線 LAN の詳細情報

こんな感じで全体としては問題なく動作しているが、気になる箇所が 2点あった。

1点目は (fig.16) のように、WMWifiRouter を終了させても通話不可 (?) のアイコンが残ったままになること。Windows Mobile を再起動すれば表示は元に戻るし、この状態でも受話も発呼もできるので実用上問題はないが、気持ち悪い。

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fig.16: アイコンが残ったまま

2点目は、PC から WMWifiRouter に無線 LAN 接続して接続を終了すると、もともと設定してあった既存の無線 LAN アクセスポイントに接続できなくなること。接続するには、「設定」→「接続」→「ネットワークカード」の「アクセスするネットワーク」で、該当ネットワーク設定に手動で接続するか、Ad[es] を再起動させる。よくわからない挙動で少々面倒だが、前述の消えないアイコン問題もあるので、WMWifiRouter を使い終わったら Ad[es] を再起動させておくのが確実だろう。

Ad[es] の Windows Mobile 6 Classic は無線 LAN を有効にした状態で再起動すると、再起動後も無線 LAN が有効になっている。この際 WMWifiRouter の Wi-Fi ネットワークの管理方法で "Stored (Faster)" を選択していると、Ad[es] が自分自身のアドホック接続に自動接続してしまって、普段利用するアクセスポイントに接続しない現象が発生した。この現象を避けるため、WMWifiRouter の Wi-Fi ネットワーク管理方法はデフォルトの "Dynamic (Safer)" にしておいた方がいいと思う。

気になる点はあるものの、コスト面でのメリットは大きいと判断したので、本家サイトからライセンスを購入した。今の € レートなら、国内で WMWifiRouter を販売しているサイトより本家の方が安い (2009-07-16 現在)。

最後に一つ。この利用方法は WMWifiRouter が回線を占有し、一定時間通話ができない状態になりやすい。Ad[es] を彼女との通話無料のために使っている紳士諸君は彼女との関係に深刻な影響を与える恐れもあるので、Ad[es] の「設定」→「電話」→「基本」タブの「データ通信」で「通信中着信」が ON にしておくことをお勧めしたい。僕は仕事の連絡を無視してしまうと困るので、ON にしてある。

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