我が家と実家の LAN は、実家に置いた VPN ルーター (中古ノート PC) が我が家に VPN 接続することで拠点間接続され、双方のサーバーやネットワーク機器に対して、ZABBIX による常時監視体制を敷いている。台風 18号が日本に上陸寸前だった先日 10/08 の 03:00頃、その ZABBIX が実家側の機器の障害発生を知らせて来た。我が家の VPN サーバーが止まると実家の全機器の監視もできなくなるが、その場合は単に VPN サーバーのみの障害として扱うようにしてある。このときは VPN サーバーをはじめ、我が家の LAN 内に異常はなかったので、実家で何らかの異常事態が発生したと言うことだ。朝になってから携帯電話で連絡し、実家のある愛知県東部で大規模な停電が発生していたことがわかった。(復旧には 12時間以上かかった)

我が家も実家もファイルサーバーは RAID 1 でディスク障害に備えているとは言え、停電等でブツッと行ったような場合は、2台の HDD が同時に死ぬ可能性がある。幸いにして今回実家のファイルサーバーは無事だったが、実家では以前も FTTH 導入工事の際に電源ケーブルを抜かれた (サーバーは気をつけろと言っただろ!) ことがあるし、我が家でも 3年前のクレーン船の事故による停電攻撃を食らっている。不安になって来たので、この手の電源障害に備えるため、無停電電源装置 (以下 UPS) を導入することにした。


UPS と言っても、業務で使うことの多いゴツいものから小型のものまで、幅広い。その中から 「なるべく 1万円以下」 「監視ツールが Linux に対応 (ファイルサーバーは CentOS 5.3)」 と言う条件で探したところ、SOUNDHOUSE 社の CLASSIC PRO シリーズが目に留まった。 低価格帯の UPS は、付属する監視ツールの対応 OS が Windows や Mac だけの場合が多いが、この CLASSIC PRO シリーズは付属監視ツールが Linux に対応していて、スペックや価格のバランスから、「お買い得」 感が高いと感じた。

しかし製品サイトで UPSilon 2000 なる電源管理ソフト (これで 「イプシロン」 と読ませたいのだと思う) が 「Linux 対応」 と謳われていても、X Window 必須の GUI ツールだったり、CentOS 5.3 のカーネル 2.6.18 は未対応、と言うオチでは困る。電源管理ソフトが自社製ではない (台湾の Mega System Technologies, Inc. 製) せいか、メーカーに問い合わせても明確な回答が得られず不安要因が残る状態ではあったが、まァ失敗してもそれほど痛い金額ではないし、多分大丈夫だろうと、液晶ディスプレイ装備の UPS500LX (¥5,980) を買ってみた。我が家のファイルサーバーの消費電力なら、この 300W (出力ソケット x2) のモデルで十分カバーできる。

商品が届いて付属 CD-ROM の内容を確認してみると、電源管理ソフトの UPSilon 2000 は Windows 用で、UNIX 系 OS は予想通り CUI の UPSilon for UNIX とやらを使うらしい。しかし "readme.txt" 中の copyright には 1996-1999 とあるので、"Operating Systems Supported" の "Linux 2.x" とは、カーネル 2.2 までの可能性が高い。カーネル 2.6.18 は大丈夫なのかと一抹の不安を感じながら、付属の "special RS-232 cable" で UPS500LX とファイルサーバーと接続し、CentOS 5.3 に UPSilon for UNIX をインストールしてみた。(事前にバッテリーを充電しておく必要あり)

インストール作業は簡単で、CD-ROM に収録された "linux.Z" とインストール・スクリプト "install" を任意の場所にコピーし、"install" に実行属性を与えて実行後、プラットフォームを選択するだけだ。僕の環境では uncompress コマンドが存在しなかったことで "install" が途中でコケたが、yum で ncompress パッケージをインストールしてから再度実行し、無事に完了した。この作業で関連ファイル群が "/etc/upsilon" にコピーされて監視デーモンが起動し、"/etc/rc.d/rc.local" (プラットフォームによって異なる) に監視デーモン自動起動用の記述が追記される。

インストール・ディレクトリ内の upsilon コマンドに引数 "status" を与えて実行すると、UPS の状態を確認できる。僕の環境では、当初 UPS の応答がない旨のメッセージが表示されて状態を取得できなかったが、原因はインストール・スクリプトがデフォルトで設定したシリアル・コンソールのデバイスが "/dev/ttyS1" とされていたためで、upsilon に引数 "config" を与えて起動する設定ツールで "Communication Port" を "/dev/ttyS0" に修正すると、正常に状態を取得できるようになった。

その古さからマトモに動くのか危ぶまれた UPSilon for UNIXは、実際に試してみたところ、全く問題はなさそうだ。UPS500LX の電源ケーブルを抜くと即座にバッテリーモードに切り替わって指定時間経過後に CentOS がシャットダウンされ、UPS500LX 自身も自動停止した。素晴らしい。このシャットダウン処理のカスタマイズは、こちらのエントリーで。

今まで UPS は自宅で導入するには少々値が張る代物だと思い込んでいたので、数千円でこの安心が得られたのは意外だった。自宅サーバーはもちろん、企業でも小規模なオフィスであれば、この CLASSIC PRO シリーズは十分実用になると思う。実家では UPS1200LX (許容電力 720W、出力ソケット x4、¥8,980) を導入し、ファイルサーバー x1、デスクトップ PC x1、液晶ディスプレイ x1、スイッチング・ハブ兼ノート PC 用アクセスポイントとして機能している無線 LAN ルーター x1 を保護する予定だ。

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